シャトー・カノン2018は、サンテミリオンの高台に広がる石灰岩質Terroirを映す一本です。メルロの豊かな果実とカベルネ・フランの気品を備え、暑く乾燥した2018年らしい凝縮感を、鮮烈な酸とミネラルが端正に支えます。

シャトー・カノンは1760年、海軍士官ジャック・カノンがサンテミリオンの丘に畑を取得したことに始まる、生産者の名を冠した歴史あるシャトーです。18世紀末には「クロ・サン・マルタン」と呼ばれた区画を含む畑を整え、やがて右岸を代表する銘柄として評価を確立しました。1853年にはボルドーのネゴシアン、ギヨーム・ルベイが取得し、現在に通じるシャトーの景観や石垣を整備しています。
1996年からはシャネルの共同オーナーであるヴェルテメール家が所有します。大規模な畑の再編と醸造施設の刷新を長期的に進め、区画ごとの個性を丹念に引き出す体制を築きました。1855年格付けとは別にサンテミリオンで定められる格付けでは、2012年にPremier Grand Cru Classé Aに認定された実績を持ちます。2022年には同格付けから離脱しましたが、その選択は品質評価そのものを後退させるものではなく、カノンは現在も石灰岩台地を代表するトップシャトーの一つと見なされています。
Château Canon 2018は、メルロ72%、カベルネ・フラン28%で構成されます。畑はサンテミリオン村の南西、標高およそ80〜90メートルの石灰岩台地にまとまる約34ヘクタール。母岩に近い硬質な石灰岩、その上を覆う粘土石灰質土壌、斜面に見られる粘土の層が複雑に交わります。石灰岩は根を深く導き、乾燥年にも水分を緩衝する一方、ワインに張りのある酸とチョーキーなミネラル感をもたらす重要な要素です。
収穫は区画ごとに行われ、重力を活用して果実を扱うセラーで選果されます。発酵は温度管理されたコンクリートタンクを中心に進め、抽出は果皮や種子の状態を見極めながら穏やかに実施。ワインはフレンチオーク樽でおよそ18か月熟成され、新樽比率は例年約50%を軸とします。樽香で果実を覆うのではなく、石灰岩由来の直線的な輪郭、カベルネ・フランの花の香りを保つ醸造方針です。暑く乾燥した2018年は、サンテミリオンで豊かな果実を得た年であり、カノンでは力強さと緊張感の均衡がとりわけ高く評価されています。
外観は縁に紫を残す濃いルビーから深いガーネット。若い段階では粘性が明瞭で、グラスの内側をゆっくりと流れる脚が、果実の充実度を印象づけます。第一香にはカシス、熟したブラックチェリー、プラムの黒系果実が現れ、鉛筆の芯、湿った石灰岩、スミレ、ほのかな甘草が重なります。
空気に触れるにつれ、バラの花弁、紅茶、杉、葉巻、ダークチョコレート、砕いた石のニュアンスが開きます。アタックは濃密で滑らかですが、単に甘美なだけではありません。中盤では粒子の細かいタンニンが果実を包み、鮮やかな酸が味わいを上方へ引き締めます。余韻にはブラックベリー、ミント、塩味を帯びた石灰質の感触が長く残り、熟成によって森林の下草やトリュフの複雑さへ向かうことが期待されます。若いうちは数時間のデキャンタージュが有効で、飲み頃は2020年代後半からさらに広がるとされます。市場価格は約41,000円が目安ですが、流通時期や保管状態による差には注意が必要です。
このワインには、肉の旨味と香ばしさを備え、ソースに酸味や土っぽい風味を持たせた料理がよく合います。第一に、仔羊背肉のローストを推奨します。ローズマリーとニンニクを効かせ、ジュのソースに黒オリーブを加えると、メルロの果実味とカベルネ・フランのハーブ香が美しく響き合います。
鴨胸肉のロティ、赤ワインと黒スグリのソースも好相性です。皮目を香ばしく焼き、中心をロゼ色に仕上げることで、ワインの繊細なタンニンを生かせます。牛頬肉を赤ワインでじっくり煮込み、ポルチーニ茸と根セロリのピュレを添える一皿は、熟成由来の土や森を思わせる要素を引き出します。さらに、ジロール茸を添えたウズラのロースト、またはコンテ24か月熟成のような硬質チーズも有力な選択肢です。供出温度は16〜18度が適し、冷やしすぎず、香りがほどける時間を取るとよいでしょう。
シャトー・カノンは、ボルドー市街地の東約40キロ、サンテミリオンAOCの歴史的な村落のすぐ南西に位置します。畑の中心は、サンテミリオン鐘楼を望む石灰岩台地「プラトー・カルケール」にあり、隣接するシャトー・マグドレーヌやシャトー・ベレール・モナンジュとともに、アペラシオンの石灰岩Terroirを象徴する一帯を成します。
この台地は、ポムロールに多い粘土質土壌や、サンテミリオン東部の砂・粘土主体の区画とは異なる表情を見せます。地下の石灰岩と冷涼な空気を含む地層は、夏の高温下でもブドウの成熟を急がせすぎず、夜間の温度差とともに香りと酸を保つ働きをします。大西洋の影響を受ける海洋性気候のもと、春の霜、夏の乾燥、収穫期の降雨という年ごとの変動に向き合いながら、カノンは深みと緊張を兼ね備えたサンテミリオンを表現しています。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。