ナパ・ヴァレー北端カリストガの歴史的な石窟で育まれるJ. Schramは、シュラムスバーグを象徴するプレステージ・スパークリングです。冷涼な畑のシャルドネを核に、長い澱熟成と樽使いで、果実味、緊張感、複雑な熟成香を重ねます。

シュラムスバーグ・ヴィンヤーズの起点は1862年、ドイツ出身のジェイコブ・シュラムが、ナパ・ヴァレー北端のカリストガ、ダイヤモンド・マウンテン麓に土地を取得したことにあります。石造りのセラーと山腹の洞窟を築いたシュラムの名を受け継ぎ、1965年にはジャック&ジェイミー・デイヴィス夫妻が荒廃していた邸宅と畑を再生しました。以来、シャンパーニュ方式の高品質なスパークリングに特化し、カリフォルニアにおけるプレミアム・スパークリングの先駆者として確固たる位置を築いています。
同社を語るうえで欠かせないのが、1972年の北京での米中首脳会談です。晩餐会でシュラムスバーグのブラン・ド・ブランが供された出来事は、米国産スパークリングの存在を国際的に印象づけました。J. Schramは創業者への敬意を冠したフラッグシップであり、優れた原酒が揃う年にのみ造られる、メゾンの哲学を最も濃密に映すキュヴェです。
J. Schram 2018は、シャルドネを主体にピノ・ノワールをブレンドするヴィンテージ・スパークリングです。ブドウは単一畑名を前面に掲げるものではなく、ナパ・カーネロス、ソノマ・コースト、アンダーソン・ヴァレーなど、太平洋の冷気が届くノース・コーストの選抜区画を軸に構成されます。シャルドネが柑橘や白い花、石のような緊張感を担い、ピノ・ノワールが赤い果実の陰影と口中の厚みを補います。
収穫した果実は区画ごとに丁寧に圧搾され、ベースワインはフレンチオーク樽を用いて発酵・熟成されます。樽は香りを付けるためだけでなく、酸と果実の輪郭に奥行きを与えるための道具です。その後、瓶内二次発酵を行う伝統製法で仕上げ、カリストガの石窟で長期にわたり澱と接触させます。澱熟成がもたらすブリオッシュやローストナッツの層と、冷涼地由来の鮮烈な酸を両立させる点に、この銘柄の個性があります。2018年は生育期が比較的穏やかで、カリフォルニア全体でも均整の取れた品質と評価される傾向があり、J. Schramにも精度の高い果実表現が期待されます。
グラスでは淡いゴールドに、わずかな緑のニュアンスを帯びた色調を見せます。泡は細かく持続的で、液体には長期熟成由来のなめらかな粘性と、端正な流動感があります。第一香はレモンピール、グレープフルーツ、青リンゴ、白桃。時間とともに、焼き立てのブリオッシュ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、蜜蝋、かすかなバニラが現れ、樽と澱の仕事が立体的に感じられます。
アタックは硬質なシトラスの酸と緻密な泡が牽引し、すぐに熟した洋梨や黄リンゴ、塩味を思わせるミネラル感へ移ります。中盤はクリーミーでありながら重すぎず、ピノ・ノワール由来の穏やかな骨格が味わいを支えます。余韻にはローストナッツ、柑橘の皮、チョークのような乾いたニュアンスが長く残ります。温度は8〜10℃から始め、少し上がるにつれて表情を確かめるのが適しています。国内での推定市場価格は約5万円ですが、長期熟成を経た希少なフラッグシップであり、輸入時期や流通量による価格差が大きい銘柄です。
豊かなテクスチャーと高い酸を備えるため、繊細な魚介から香ばしいロースト料理まで受け止めます。まず好相性なのは、帆立貝のソテー 焦がしバターとカリフラワーのピュレ添えです。帆立の甘みとバターのナッツ香に、ワインの澱熟成香とレモンを思わせる酸が響き合います。
二皿目には、甘鯛の松笠焼き 甲殻類のソースが適します。鱗の香ばしさ、濃厚なソース、甘鯛の上品な身質を、泡の洗練された口当たりが整えます。和食なら、ずわい蟹と雲丹の茶碗蒸しもおすすめです。出汁の旨味と雲丹のコクに対して、塩味を思わせるミネラル感が輪郭を与えます。さらに、地鶏のロースト モリーユ茸のクリームソースでは、シャルドネ主体のふくらみと樽由来のニュアンスが料理の深みを受け止めます。
醸造拠点はナパ郡カリストガのダイヤモンド・マウンテン地区にあり、歴史的な石窟はヴァカ山地西側の斜面に刻まれています。ただしJ. SchramのTerroirは、暑い内陸のカリストガだけで完結しません。核となるのは、サン・パブロ湾から冷気が入るロス・カーネロスAVA、ソノマ郡西部のソノマ・コーストAVA、そしてメンドシーノ郡のアンダーソン・ヴァレーです。
とりわけアンダーソン・ヴァレーのブーンヴィルやファイロ周辺は、海霧が内陸へ流れ込むため夏でも涼しく、昼夜の寒暖差が大きい地域です。果実はゆっくり成熟し、シャルドネには鋭い酸、ピノ・ノワールには繊細な香りが保たれます。カーネロスの海洋性気候がもたらす緊張感、ソノマ・コーストの冷涼な骨格、内陸の石窟で重ねる熟成。その複数の場所と時間が、J. Schram 2018を単なる華やかなスパークリングではなく、アメリカ西海岸を代表する長熟型の一本にしています。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。