フィンカ・ドフィ2018は、アルバロ・パラシオスがプリオラートの急峻なリコレリャ土壌から描く、気品と力強さを兼ね備えた赤ワインです。グラタリョップスのガルナッチャを主軸に、黒系果実、ハーブ、鉱物感が幾重にも広がります。

アルバロ・パラシオスは、リオハ・アルタの名門パラシオス・レモンド家に生まれ、ボルドーのシャトー・ペトリュスでも経験を積んだ醸造家です。1989年、当時は荒廃した急斜面の畑が多く残っていたカタルーニャ州プリオラートへ移り、醸造家ルネ・バルビエらとともにこの地の再興を牽引しました。ワイナリーの最初のヴィンテージは1990年です。
国際市場においてプリオラートを高級産地として認知させた中心人物の一人であり、畑ごとの個性を重んじる姿勢は一貫しています。力強さだけを競うのではなく、古樹、斜面、母岩、標高がもたらすTerroirを透明に表現することが哲学です。のちにビエルソでも成功を収めますが、フィンカ・ドフィはプリオラートにおけるこの生産者の原点を示す重要なキュヴェといえます。
Finca Dofíは、プリオラートDOCaのグラタリョップス村に位置する単一区画の畑に由来します。アルバロ・パラシオスが1990年に取得したこの畑は、村を見下ろす急斜面に広がり、主にガルナッチャ(グルナッシュ)とカリニェナ(カリニャン)が植えられています。一部には白ブドウも混植され、区画ごとの構成は植樹時代やヴィンテージにより異なります。
土壌の核となるのは、薄く割れやすい黒色粘板岩「リコレリャ」です。日中の熱を受け止めながら根を深く岩盤の割れ目へ導き、果実に凝縮感と塩味を思わせる鉱物的な緊張を与えます。醸造では区画ごとに収穫・選果し、木製発酵槽を含む容器で発酵させ、フレンチオーク樽および大樽を用いて熟成する手法が採られます。新樽香を前面に出すより、果実と石質の風味を整えるための樽使いです。
2018年は、比較的穏やかな成熟条件によって酸と輪郭が保たれた年とされ、フィンカ・ドフィの持ち味である優雅さを捉えやすいヴィンテージです。国内市場での価格は流通状況により幅がありますが、約13,000円がひとつの目安となります。
グラスでは、中心部に深みを備えたルビーからガーネットの色調を見せ、縁にはわずかな紫のニュアンスが残ります。濃密でありながら不透明一辺倒ではなく、グラスの内側をゆっくり流れる粘性にも熟した果実の充実が表れます。
第一香はブラックチェリー、カシス、熟したラズベリー、プラム。続いて、乾いたタイムやローズマリー、ラベンダー、甘草、黒胡椒が現れ、時間とともに黒鉛、砕いたスレート、ほのかなカカオと杉の香りが重なります。プリオラートらしい地中海性ハーブの温かさと、リコレリャ由来とされる冷涼な石の印象が対照的です。
アタックはなめらかで、赤・黒系果実の密度が口中を満たします。中盤ではカリニェナが骨格を添え、ガルナッチャの丸みある果実味を引き締めます。タンニンはきめ細かいものの豊富で、酸は過度に鋭くなく、熟度を支えるように伸びます。余韻にはスパイス、ドライハーブ、鉄分を思わせる塩気が長く続きます。デキャンタージュを施すか、大ぶりのグラスで時間を与えることで、層の多い表情が開きやすくなります。
フィンカ・ドフィ2018には、凝縮した肉の旨味と香ばしさを備えた料理がよく合います。第一の候補は、仔羊の肩肉をローズマリー、にんにく、オリーブオイルでマリネし、じっくりローストした一皿です。ワインにある地中海性ハーブの香りが料理と響き合い、脂の甘みをタンニンが端正にまとめます。
牛肉なら、イベリコ豚のチョリソを添えた牛ほほ肉の赤ワイン煮込みがおすすめです。煮込みのゼラチン質と濃いソースがワインの骨格を受け止め、黒胡椒や甘草を思わせる風味を引き出します。鴨胸肉を皮目から焼き、黒オリーブ、ドライトマト、レンズ豆を添える調理も好相性です。
野趣を楽しむなら、猪肉の炭火焼きにポルチーニ茸のソテーを添える組み合わせも適しています。熟成マンチェゴ、または羊乳のハードチーズと合わせれば、果実味、塩味、ナッツの風味が穏やかに溶け合います。
プリオラートDOCaは、バルセロナの南西、タラゴナ県内陸部に広がる山岳地帯です。フィンカ・ドフィのあるグラタリョップス村は、その歴史的中心地の一つで、ベルムンツ・デル・プリオラート、ポルレラ、トラ・デ・カルトーシャ、パルセットなどの村々とともに、谷と急斜面が複雑に入り組む景観を形作ります。
畑は標高、おもに北東・北西・南向きなどの方位、斜度によって成熟の速度が大きく変わります。夏は乾燥して暑く、夜間には山地の影響で気温が下がるため、健全な果実と酸の保持が両立しやすい環境です。ただし、降雨量が少なく土壌も痩せているため、収量は自然に抑えられます。
リコレリャの斜面で育つブドウは、収穫そのものが困難なほどの急勾配に根を張ります。この厳しい土地こそが、フィンカ・ドフィに単なる濃さではない、岩石的な緊張感、深い果実味、そして熟成によって複雑さを増す持続力を与えています。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。