シャトー・ボーモン2018は、ジロンド川左岸のキュサック=フォール=メドックで造られる、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のオー・メドックです。熟した黒果実、杉、スパイスを備え、2018年らしい量感と端正な骨格を兼ね備えます。

シャトー・ボーモンは、ボルドー左岸、オー・メドックのキュサック=フォール=メドック村に広がる古典的なエステートです。その土地の記録は18世紀後半にさかのぼり、現在のシャトー建築は19世紀半ばに整えられたとされます。1854年築の端正な館を擁するこのシャトーは、1855年のメドック格付けには入らなかったものの、長年にわたり安定した品質で知られるCru Bourgeoisの重要な一角です。
1980年代以降は、サントリーとカステルによる共同事業グラン・ミレジム・ド・フランス(GMF)のもとで設備と畑が刷新されました。広い自社畑を基盤に、日常の食卓にも開かれた親しみやすさと、左岸らしいカベルネの規律を両立させることが哲学です。著名格付けシャトーのような豪奢さより、毎年のヴィンテージを的確に表す端正さに評価が集まる生産者といえます。
シャトー・ボーモンの畑は約110ヘクタールに及び、ジロンド川に近い緩やかな地形に位置します。表土にはガロンヌ由来の深い砂利が多く、排水性と蓄熱性に優れるため、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンの成熟を助けます。粘土を含む区画ではメルロがふくらみを補い、プティ・ヴェルドが色調とスパイス感に寄与します。
2018年はカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、メルロ、プティ・ヴェルドを組み合わせたブレンドです。区画・品種ごとに収穫し、温度管理したステンレスタンクで発酵。果皮との醸しでは抽出を過度に強めず、果実味とタンニンの均衡を探ります。その後、フレンチオーク樽でおよそ12か月熟成させ、新樽も一部用いることで、木樽の香りを果実の輪郭に重ねます。濃密さだけを追うのではなく、砂利質Terroirらしい直線的な骨格を残す仕立てです。
外観は、中心部に黒みを帯びた深いルビーからガーネット。グラスを傾けると縁には熟成の始まりを思わせる赤褐色がのぞき、粘性は中程度からやや高めです。第一香ではカシス、ブラックベリー、黒スグリのリキュール、紫の花を思わせる香りが現れます。空気に触れるにつれ、杉、鉛筆の芯、シガーボックス、甘草、クローヴ、ローストした樽のニュアンスが重なります。
アタックは滑らかで、熟した黒果実の甘やかな印象が口中を満たします。中盤では酸が輪郭を与え、カベルネ由来の細かなタンニンが味わいを引き締めます。2018年のボルドーは温暖で乾燥した生育期による充実感を備える年として評価され、このワインにも密度と熟度が表れています。一方で過度に重くはならず、後半には黒鉛、ドライハーブ、ほろ苦いカカオを伴う余韻へ移ります。若いうちはデキャンタージュで1時間ほど置くと表情が整い、適切な保管下ではさらに5〜10年ほどの熟成も期待できます。市場価格は約15,000円が目安ですが、流通量や販売時期による差が大きい点には留意が必要です。
赤身肉の旨味とロースト香に寄り添う一本です。まず相性が良いのは、牛ランプ肉を塩、黒胡椒、ローズマリーで焼き上げ、赤ワインソースを添えたローストビーフです。肉の焦げ目とソースの酸味が、ワインのカシス香と杉のニュアンスを引き立てます。
鴨胸肉のローストに、ポルチーニ茸のソテーとジュのソースを合わせる一皿も好適です。鴨の鉄分を思わせる風味と茸の土っぽさが、熟成により現れる黒鉛や下草の印象と呼応します。また、仔羊肩肉をニンニク、タイム、オリーブでじっくり煮込むナヴァラン風の料理は、タンニンをやわらげながら果実の厚みを際立たせます。熟成コンテやミモレットなど、硬質でナッティーなチーズも余韻を豊かにします。
なお、産地情報に記されることがある南アフリカのWalker Bayは、この銘柄の産地ではありません。Walker Bayにはボット・リヴァーを拠点とするBeaumont Family Winesがあり、同名の「Beaumont」と混同されやすいものの、シャトー・ボーモン2018はフランス、ボルドーのAOC Haut-Médocに属します。
キュサック=フォール=メドックは、マルゴーの北西、サン=ジュリアンの北側に連なるメドックの村です。ジロンド河口がもたらす水量は気温を緩和し、秋の成熟期を支えます。大西洋からの湿潤な風を受ける地域でもあり、病害のリスクを見極める栽培が欠かせません。砂利の隆起部、砂と粘土が混じる低地という小さな地形差を読み、カベルネとメルロを植え分けることが、この地のCru Bourgeoisに複雑さをもたらしています。華美ではないながら、左岸メドックの風土をまっすぐ伝えることが、シャトー・ボーモンの魅力です。
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