フィンカ・ロス・メンブリージョス2019は、アルゼンチン、メンドーサ州ウコ・ヴァレーのパラヘ・アルタミラで育つ単一区画のマルベックです。石灰を多く含む沖積土壌と高標高の冷涼さを映し、濃密さだけに寄らない緊張感と繊細な塩味を備えます。

ボデガ・ズッカルディの起点は、アルベルト・ズッカルディがメンドーサ州マイプにワイナリーを創設した1963年です。もともとは灌漑設備の技術者だったアルベルトが、自らのシステムを実証するためにブドウ畑を植えたことが、今日のワイン造りにつながりました。乾燥したアンデス山麓において、水をいかに畑へ導くかという課題から始まった生産者であることは、同社の根底にある土地への視線をよく表しています。
現在は三代目のセバスティアン・ズッカルディが醸造を率い、量産地として知られたメンドーサのイメージを越え、区画ごとの土壌と標高を表現する造り手として国際的な評価を確立しました。パラヘ・アルタミラのワイナリーを拠点に、コンクリートや大樽を用いて果実と土壌の輪郭を優先する姿勢を貫いています。ズッカルディ・ヴァレ・デ・ウコは「ワールズ・ベスト・ヴィンヤーズ」で複数年にわたり首位に選ばれたことでも知られ、アルゼンチンのTerroir重視の潮流を象徴する存在です。
フィンカ・ロス・メンブリージョスは、ウコ・ヴァレー南部、サン・カルロス県のGIパラヘ・アルタミラに位置する畑の名を冠した赤ワインです。品種はマルベック100%。畑は標高約1,100メートルの高地にあり、トゥヌヤン川がアンデスから運んだ沖積層に、大きな丸石と炭酸カルシウムを含む石灰質の母材が複雑に混じります。表土の下に現れる石の大きさや石灰の分布が、同じアルタミラ内でもワインの表情を分ける要因です。
「メンブリージョス」はスペイン語でマルメロを指し、この土地固有の景観を思わせる名前でもあります。醸造では、区画の個性を覆い隠す抽出や新樽香を避ける方針が採られます。2019年はコンクリート容器で発酵させ、熟成には主として5,000リットル級の大樽を用いる設計です。小樽由来の甘いロースト香を前面に出すのではなく、マルベックの花や果実、石灰質土壌に由来するとされる引き締まった質感を保つことが狙いです。2019年はメンドーサの近年の優良年の一つとして、熟度と酸の均衡に優れる年と評価されることが多く、本銘柄でもその均整が重要な魅力となっています。
外観は黒みを帯びた濃いルビーから紫がかったガーネットへと移ろい、中心部には深い色調を湛えます。ただし粘性は必要以上に重く見せず、高標高産マルベックらしい端正さがあります。第一香では、ブラックベリー、熟したプラム、カシスに、スミレ、乾いたローズマリー、黒胡椒が重なります。時間とともに香りは赤系果実へも開き、オレンジピール、鉛筆の芯、湿った石、ほのかな燻香が現れます。
アタックは凝縮した黒果実を感じさせながら、口当たりは鮮明で直線的です。中盤ではきめ細かなタンニンが広がり、プラムの果肉感、紫花、ハーブの清涼感に、石灰を思わせる粉質で塩気を伴うニュアンスが加わります。余韻は長く、果実の甘さを引き締める酸と鉱物的な緊張感が続きます。若いうちはデキャンタージュで香りが整いやすく、熟成によって土っぽさや革、乾燥花の複雑さを深める可能性も期待されます。国内での市場価格はおおむね2万円前後が目安で、アルゼンチンの単一畑マルベックを知るうえで重要な一本です。
力強さと緊張感を兼ね備えるこのワインには、脂肪分を備えつつ、焼き目やハーブの香りを持つ肉料理がよく合います。第一に挙げたいのは、ローズマリーとニンニクで香りを付けた骨付き仔羊の炭火焼きです。仔羊の脂と香ばしさをタンニンが受け止め、ワインのスミレやハーブの要素が自然につながります。
牛肉なら、粗挽き黒胡椒を効かせたアンガス牛リブアイのグリル、またはアルゼンチンらしいアサード風の牛バラ肉の薪火焼きが好相性です。赤身の旨味には果実の密度が寄り添い、炭火の香りには大樽由来の控えめなスパイス感が応えます。鴨胸肉を皮目からローストし、サワーチェリーと赤ワインのソースを添える一皿も好適です。肉以外では、ポルチーニ茸と熟成ペコリーノを使ったリゾットが、ワインに潜む土壌的なニュアンスを引き立てます。
パラヘ・アルタミラは、メンドーサ州ウコ・ヴァレーのサン・カルロス県、ラ・コンスルタの西方に広がる高地の地理的表示です。アンデス山脈を望む標高約1,050〜1,150メートルの一帯で、昼夜の寒暖差が大きく、日中に熟した果実へ夜間の低温が酸と香りを保ちやすい環境です。降雨量は少なく、アンデスの雪解け水による灌漑がブドウ栽培を支えます。
この地域を特徴づけるのは、トゥヌヤン川が形成した扇状地の土壌です。砂やシルトだけではなく、深い層にまで丸石が連なり、その石に石灰質のコーティングや炭酸カルシウムの集積が見られます。排水性が高く、ブドウ樹は過度な生育を抑えながら根を深く伸ばします。フィンカ・ロス・メンブリージョスは、このアルタミラの石灰質で石の多い区画をマルベックで表現したキュヴェです。豊満な果実味で知られるアルゼンチン・マルベックに、冷涼な輪郭、チョーキーなタンニン、そして土地の緊張感をもたらす産地として、パラヘ・アルタミラは特別なCruと見なされています。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。