シャトー・ド・ボーカステルの2016年は、ムールヴェードルを重視する独自のブレンドと、丸石・粘土・石灰岩質土壌が生む力強さを備えた赤です。黒系果実、スパイス、革、ハーブの層が重なり、優れた熟成力も期待されます。

シャトー・ド・ボーカステルの名は、ローヌ川東岸のこの地で1549年には記録に現れます。現在につながる歴史は、ピエール・トラミエが1909年に畑を取得したことから本格的に始まりました。その後を継いだジャック・ペランは、シャトーヌフ・デュ・パプで認可された13品種を尊重し、なかでも当時は脇役になりつつあったムールヴェードルの価値を再評価した人物として知られます。
現在はペラン家が運営し、シャトーヌフ・デュ・パプを代表する生産者の一つに数えられます。化学肥料や除草剤に頼らない栽培を早くから実践し、1950年代には有機栽培へ、1970年代にはビオディナミへと歩みを進めました。流行に合わせて味を整えるのではなく、品種の多様性と土地の個性を瓶に映すこと。それが同家の一貫した哲学です。
この赤は、ムールヴェードルとグルナッシュを各30%程度、クノワーズ、シラーを各10%程度とし、残る比率にヴァカレーズ、テレ・ノワール、ミュスカルダンなどの認可品種を用いることを基本とします。全13品種を実際にブレンドする数少ない造り手であり、グルナッシュ主体のふくよかさだけではない、野性味、緊張感、長期熟成力を得る理由がここにあります。
ブドウはクルテゾンに近い北東部の自社畑で育ち、区画と品種ごとに収穫・醸造されます。発酵にはコンクリート槽や木製の大桶を使い分け、品種固有の表情を損なわないように抽出を行います。熟成も新樽の香りを前面に出すスタイルではなく、大型のオーク樽フードルを中心に実施。ブレンド後に時間を与えることで、力のあるタンニンと香味をなじませます。2016年は南ローヌの優良年として広く評価され、成熟感と酸の均衡を備える年とされます。市場価格は約24,000円が目安ですが、保管状態や流通時期によって変動します。
外観は中心部に深みのあるルビーからガーネット。縁にはわずかに熟成のニュアンスが差し、グラスの内側をゆっくり伝う粘性が、凝縮した果実味を予感させます。注ぎたてはブラックベリー、カシス、黒スグリ、熟したプラムといった黒系果実が中心です。そこに黒胡椒、甘草、クローヴ、ガリーグを思わせるタイムやローズマリー、乾いた土の気配が重なります。
空気に触れるにつれて、ムールヴェードル由来とされる革、燻製肉、鉄分、ドライフラワーの香りが現れ、複雑さを増していきます。アタックは密度が高く、熟した果実の甘みを伴いながらも、過度に重くはありません。中盤では細かながら量感のあるタンニン、塩味を思わせるミネラル感、スパイスが骨格をつくります。余韻には黒オリーブ、薬草、土、樽由来の穏やかなロースト香が長く残ります。すでに楽しめる段階にありますが、適切なセラーでさらに10年から15年ほど熟成させる選択肢もあるでしょう。供出は16〜18℃、若い表情が強いボトルなら1〜2時間前の抜栓またはデキャンタージュが有効です。
ワインの力強さには、脂、焼き目、香草を備えた料理がよく合います。まず挙げたいのは、骨付き仔羊をニンニク、ローズマリー、タイムでマリネし、炭火またはオーブンでローストした一皿です。仔羊の脂の甘みをタンニンが引き締め、ハーブの香りがガリーグのニュアンスと響き合います。
赤ワインとフォン・ド・ヴォーで煮込む牛頬肉のドーブ・プロヴァンサル、黒オリーブとオレンジの皮を添えた鴨胸肉のロティも好相性です。より素朴な組み合わせなら、猪肉の赤ワイン煮込みに根セロリのピュレを添える料理、あるいはラム肩肉と白インゲン豆を煮込んだカスレも選択肢になります。熟成が進んだボトルには、コンテ18か月熟成やサレールなど、旨味が強く硬質なハードチーズを合わせるとよいでしょう。
シャトーヌフ・デュ・パプAOCはヴォクリューズ県にあり、シャトーヌフ・デュ・パプ村を中心に、クルテゾン、ベダリッド、ソルグ、オランジュの一部まで広がります。ボーカステルの畑はAOC北東部、クルテゾンに近い一帯に位置し、約75ヘクタールのブドウ畑を擁します。南に名高いラ・クロのような丸石の台地だけでなく、この地域には砂、粘土、石灰岩、礫が複雑に入り組みます。
ボーカステルでは、とりわけ表土を覆うガレ・ルーレ、すなわち丸い大きな礫が重要です。日中の熱を蓄え、夜間に放出する石は成熟を助ける一方、粘土と石灰岩は水分の保持と張りのある酸を支えます。ローヌ渓谷を北から吹き抜けるミストラルは畑を乾かし、病害リスクを抑える要素です。温暖で日照に恵まれた地中海性気候、石の熱、風、そして多品種の調和が、ボーカステルらしい壮大で端正なシャトーヌフ・デュ・パプを形づくっています。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。