メドック格付け第四級、シャトー・デュアール・ミロンの2018年。シャトー・ラフィット・ロスチャイルドに隣接するミロン台地の深い礫質土壌から、黒系果実、杉、黒鉛を思わせる端正なポイヤックが生まれます。若さと熟成の可能性を兼ね備える一本です。

シャトー・デュアール・ミロン2018は、メドック格付け第四級に列するポイヤックの赤です。名門シャトー・ラフィット・ロスチャイルドと同じロスチャイルド家の管理下にあり、隣接する畑の礫質Terroirを端正に表現します。暑く乾燥した夏を経た2018年は、熟した果実味と輪郭の明瞭なタンニンを備える年として、ボルドー愛好家や評論家から総じて高く評価されています。市場では約22,000円がひとつの目安ですが、年号や流通状態によって価格は変動します。
シャトー・デュアール・ミロンの起源は18世紀にさかのぼります。ただし、現代的な意味での創業年を単一年で確定する公的資料は限られており、ミロンの土地に形成された古いエステートを母体として発展したと理解するのが適切です。名称の「デュアール」は、ポイヤックで活動した船乗り、あるいは私掠船に関わった人物に由来すると伝えられ、「ミロン」はシャトー周辺の集落名を指します。
1855年のメドック格付けでは第四級(Quatrième Grand Cru Classé)に選ばれ、ポイヤックの歴史あるシャトーとして位置づけられました。20世紀半ばには設備や畑の状態が課題とされた時期もありましたが、1962年にドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルドが取得。以後、隣接するシャトー・ラフィット・ロスチャイルドで培われた区画管理、選果、醸造・熟成の知見が導入されました。規模だけを追わず、各区画の個性をグラン・ヴァンにふさわしい水準まで引き上げることが、このシャトーの哲学です。
2018年はカベルネ・ソーヴィニヨン67%、メルロ33%のブレンドです。カベルネがポイヤックらしいカシス、黒鉛、シダーウッドの骨格を担い、メルロが中盤の量感と肉づきを補います。畑は約76ヘクタール。シャトー・ラフィット・ロスチャイルドの西側、ミロン集落近くのまとまりある区画を中心とし、深い砂利、砂、下層の粘土が複雑に重なる土壌に根を下ろします。
収穫後のブドウは区画ごとに厳格に選別され、温度管理可能なコンクリートおよびステンレスタンクで発酵・醸しが行われます。醸造では果実の濃度を過度に抽出するよりも、タンニンの粒立ちとフレッシュさを保つことが重視されます。熟成はフレンチオーク樽でおよそ14〜16か月、新樽比率は約50%が基準です。樽香を前面に出すのではなく、カベルネの直線的な芯を磨き、長期熟成に耐える構造へ整えるスタイルです。
外観は青みを残した濃いルビーから紫がかったガーネット。2018年らしい深い色調を見せ、グラスの内側をゆっくり伝う脚には相応の粘性がうかがえます。第一香では、カシス、ブラックベリー、熟した黒スグリのリキュール感に、鉛筆の芯や砕いた石を思わせる黒鉛のニュアンスが重なります。
空気に触れるにつれ、スミレ、杉の箱、葉巻、甘草、ビターチョコレート、ほのかなスパイスが現れ、ポイヤックの古典的な表情がいっそう明瞭になります。アタックは凝縮していながら滑らかで、黒系果実の厚みを端正な酸が支えます。中盤ではきめ細かなタンニンが層をつくり、メルロ由来の丸みとカベルネ由来の緊張感が均衡します。余韻には黒鉛、ドライハーブ、焙煎香を伴うミネラル感が長く続きます。現時点でもデキャンタージュで楽しめますが、熟成によって森の下草や杉、なめし革を思わせる複雑さが増すと期待されています。
このワインの密度と端正なタンニンには、脂肪分と旨味を備えた赤身肉がよく合います。まず、国産牛サーロインの炭火焼き、赤ワインとエシャロットのソースは、香ばしい焼き目が樽由来のロースト香と呼応し、肉の脂がタンニンをなめらかにします。仔羊背肉のロースト、ローズマリーと黒オリーブのソースは、羊肉の野性味とハーブが、ワインの杉や甘草、ドライハーブの含みを引き立てます。
また、鴨胸肉のロティ、カシスと黒胡椒のソースも好相性です。果実のソースはカシスの香りを自然につなぎ、胡椒が余韻のスパイス感を際立たせます。より家庭的な一皿なら、牛すね肉とポルチーニ茸の赤ワイン煮込みもおすすめです。煮込みのゼラチン質と茸の土っぽい旨味が、熟成により現れるであろう森の下草のニュアンスへ橋をかけます。提供温度は16〜18℃が目安で、若いボトルは1〜2時間前の抜栓、またはデキャンタージュが有効です。
ポイヤックAOCは、ボルドー市の北西、メドック地方のジロンド河左岸に位置します。南にサン・ジュリアン、北にサンテステフを望む村で、ラトゥール、ラフィット・ロスチャイルド、ムートン・ロスチャイルドなどを擁する、カベルネ・ソーヴィニヨンの聖地のひとつです。シャトー・デュアール・ミロンの畑があるミロン集落周辺は、ラフィットの大区画に連なるポイヤック北西部の重要な場所です。
ジロンド河がもたらす温度緩和の作用に加え、表土の礫は日中の熱を蓄え、排水を促します。ブドウ樹は水分を求めて粘土を含む下層へ深く根を伸ばし、乾燥年にも安定した成熟を得やすくなります。2018年は生育後半の乾燥と日照が果実の濃度を高めましたが、ミロンの礫と粘土の組み合わせは、単なる力強さではなく、ポイヤックらしい垂直的な輪郭と清涼感を保つ鍵になったとされています。
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