ドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレのヴージョ2017は、コート・ド・ニュイの名村ヴージョに息づくピノ・ノワールです。赤い果実、花、ほのかなスパイスを備え、2017年らしいしなやかな質感と石灰質由来の凛とした余韻が魅力です。

コート・ド・ニュイの中心部、名高いクロ・ド・ヴージョを抱くヴージョ村。その村名AOCを冠するドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレの2017年は、ピノ・ノワールの華やかさと、石灰岩質土壌に根差す端正な緊張感を楽しませる赤ワインです。グラン・クリュの名声に隠れがちな村名ワインですが、この地のTerroirを日常の食卓へ近づける一本として意義があります。
Domaine de la Vougeraie(ドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレ)は、ジャン=クロード・ボワセによって1999年に正式に設立されたドメーヌです。ただし、その基盤となった畑の取得は1964年から始まっており、家族が長い年月をかけてコート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌの優良区画を集めてきた歴史があります。ヴージョに本拠を置き、現在は村名畑からPremier Cru、Musigny、Bonnes-Mares、Clos de VougeotなどのGrand Cruまでを手がける、生産地でも重要な存在です。
その象徴的な仕事の一つが、ヴージョ村内のモノポールであるClos du Prieuréの保全と醸造です。畑ごとの個性を曖昧に混ぜず、土壌、樹齢、斜面、向きを読み取りながらボトリングへつなげる姿勢は、ブルゴーニュのClimatという考え方を体現しています。環境への配慮を重視し、畑では有機栽培を軸に生物多様性を尊重する方針を採っています。
このVougeotは、ヴージョ村名AOCのピノ・ノワールから造られる赤です。ボトルの表記は畑名を前面に出さない村名キュヴェですが、ドメーヌがヴージョで所有・管理する区画には、村の北側に近いLes Crasや、Clos du Prieuré周辺など、石灰岩と粘土が複雑に交わる場所が含まれます。したがって、購入時にはラベルおよび輸入元資料でキュヴェの畑表記を確認するのが確実です。
ヴージョは斜面上部の石の多い石灰質土壌から、下部のより粘土を含む土壌まで変化に富む村です。一般に上部は香りと線の細いミネラル感、下部は果実の厚みと骨格をもたらすとされます。ドメーヌでは手摘みで選果を行い、区画とヴィンテージに応じて除梗の割合を調整しながら発酵させます。天然酵母の働きを生かす醸造と、フレンチオーク樽での熟成を基本とし、新樽は果実を覆わない範囲で用いる方針です。樽比率や全房使用率は年・ロットで変わるため、2017年の詳細は個別のテクニカルシートに従うべきですが、樽香より畑の輪郭を優先するスタイルといえます。
外観は、縁にわずかな紫を残す明るいルビーから中程度のガーネット。粘性は過度に重くなく、グラスの内側をゆっくりと流れる程度です。第一香ではフランボワーズ、赤チェリー、赤スグリといった澄んだ赤系果実が現れ、スミレやバラの花弁、湿った土、紅茶のニュアンスが続きます。空気に触れるにつれて、シナモン、白胡椒、下草、ほのかな樽由来のスモークが静かに重なります。
アタックはしなやかで、熟したチェリーの甘酸っぱさを生き生きとした酸が支えます。中盤は中程度の密度で、きめの細かいタンニンが果実味を引き締め、土っぽいミネラル感が味わいに陰影を与えます。余韻には赤い果実、ドライハーブ、石灰を思わせる塩味が残り、力強さより均衡の良さが印象に残ります。2017年のブルゴーニュ赤は、早くから親しみやすい果実味と比較的穏やかなタンニンを備える年と評価される傾向があり、このワインにもその長所が表れています。飲用温度は15〜17℃、若干の澱が見られる場合は、提供前に静かに立てておくとよいでしょう。
繊細な果実味と酸を生かすなら、ソースや火入れを重くし過ぎない料理が向きます。第一に、鴨胸肉のロティをおすすめします。皮を香ばしく焼き、赤ワインと赤スグリのソースを少量添えると、肉の旨味とワインの赤い果実が自然につながります。第二に、うずらのローストにきのこのソテー、軽いジュを合わせる一皿です。セップや椎茸の土っぽい香りが、ワインの下草やスパイスの表情を引き出します。
魚介なら、サーモンのポワレにレンズ豆の煮込みとベーコンを添える料理も好相性です。脂のある魚を酸が整え、レンズ豆の滋味が中盤のタンニンを受け止めます。和の食卓では、豚肩ロースを低温で火入れし、山椒を効かせた赤ワイン醤油ソースで仕上げる方法も適しています。熟成チーズは、ウォッシュを強くし過ぎず、ブリー・ド・モーやコンテの若めを選ぶと、ワインの香りを損ないません。
ヴージョ村は、ディジョンの南、ジュヴレ・シャンベルタンとニュイ・サン・ジョルジュの間に連なるコート・ド・ニュイに位置します。北はVosne-Romanée、南はChambolle-MusignyやFlagey-Echézeauxに近く、わずかな距離にEchézeaux、Grands-Echézeaux、Musignyなどの銘醸地が集まります。村の象徴であるClos de Vougeotは、シトー派修道士が12世紀から整備した約50ヘクタールの壁に囲まれたGrand Cruで、区画ごとの地質差が大きいことでも知られます。
村名AOCの畑は、この名高いClos de Vougeotの周辺や斜面の各所に広がります。標高はおおむね220〜300メートルで、ジュラ紀の石灰岩を基盤に、斜面上部では薄く石の多い土壌、下部では粘土の比率が高い土壌が見られます。大陸性気候のもと、冷涼な夜がブドウの酸を保ち、東から南東向きの斜面が成熟を助けます。市場価格はおおむね15,000円前後が目安ですが、輸入時期や保管状態、流通量で幅があります。Grand Cruへの入口ではなく、ヴージョという村の多層的な表情を丁寧に読むための一本として味わいたいワインです。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。