モロッコを代表する近代的ワイナリー、レ・セリエ・ド・メクネスがアトラス山脈の麓で造るシャトー・ロスラン。2022年は、標高のある畑がもたらす果実の熟度と清涼感を映す、骨格豊かな赤ワインとして注目したい一本です。

モロッコ中北部、メクネス近郊の高原に広がる畑から生まれるシャトー・ロスラン プルミエ・クリュ・ルージュ 2022です。日照に恵まれた地中海性気候と、アトラス山脈から届く夜間の冷気。その鮮明な対比を背景に、黒い果実の豊かさ、スパイス、端正なタンニンを重ねるスタイルです。モロッコワインの現在地を知るうえでも、見逃せないキュヴェといえます。
Les Celliers de Meknès(レ・セリエ・ド・メクネス)は、ブラヒム・ズニベルにより1964年に創設された生産者です。モロッコが独立して間もない時代から、メクネス周辺のブドウ栽培と近代的醸造に長期的に取り組み、今日では同国最大級かつ最も国際的に知られたワイン生産者の一つに数えられます。
同社の核にあるのは、古くからブドウが育てられてきた土地の資質を、品種選択、区画管理、衛生的な醸造設備によって再解釈する姿勢です。シャトー・ロスランはその象徴的プロジェクトで、2004年にドメーヌとして始動しました。「シャトー」の名を掲げ、畑から瓶詰めまで一貫して品質を追うこの拠点は、モロッコにおけるプレミアムワインの顔として位置づけられています。国際的なコンクールや評論家の評価においても、同社はモロッコ産ワインの認知を押し広げてきた存在とされています。
Chateau Roslane Premier Cru Rougeは、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーを中心に構成される赤ワインです。年ごとの栽培条件と選果に応じて比率は調整されるため、2022年についても厳密なブレンド詳細は流通ロットの情報を確認したいところですが、カベルネの骨格、メルローの丸み、シラーの胡椒や黒果実の表情を重ねることが、この銘柄の基本的な方向性です。
ブドウはメクネス南方、アトラス山脈の山裾に位置するシャトー・ロスランの自社畑で栽培されます。石灰質を含む粘土質土壌は保水性と水はけのバランスを備え、乾燥した生育期においてもブドウの成熟を支えます。収穫後は品種・区画ごとに醸造し、ステンレスタンクで温度を管理しながら発酵・果皮浸漬を行うのが一般的です。その後、フレンチオーク樽を用いる熟成を経てアッサンブラージュされます。樽香を前面に出すよりも、熟した果実、タンニン、フレッシュさを統合するための熟成と捉えるとよいでしょう。
外観は、中心部に深みを持つルビーからガーネットがかった赤。グラスの縁には明るい紫紅色がのぞき、粘性は中程度からやや高めに感じられます。若いヴィンテージらしい色調の鮮やかさと、凝縮感を予感させる濃度が共存します。
第一香ではカシス、ブラックベリー、熟したプラムといった黒系果実が現れ、次第にスミレ、ドライハーブ、黒胡椒、クローヴ、ほのかな甘草が重なります。空気に触れると、杉、トースト、カカオ、土っぽいニュアンスが穏やかに開くでしょう。アタックはふくよかな果実味から始まり、中盤ではシラー由来のスパイス感とカベルネ由来の引き締まった輪郭が味わいを支えます。タンニンは量感を備えながらも比較的よく熟しており、余韻には黒果実、ココア、乾いたハーブを思わせるほろ苦さが残ります。16〜18度ほどで供すると、力強さと清涼感の均衡をつかみやすくなります。
しっかりした骨格とスパイスのニュアンスを持つため、香ばしさや肉の旨味を備える料理と好相性です。第一に挙げたいのは、クミン、パプリカ、コリアンダーで下味を付けた仔羊肩肉のタジン、プルーンとアーモンド添えです。甘味のあるドライフルーツと羊肉の脂を、ワインの果実味とタンニンが受け止めます。
牛すね肉を赤ワインとトマトで煮込んだモロッコ風煮込みも適します。煮込みのゼラチン質と深いソースには、樽熟成由来のカカオやスパイスの香りがよく寄り添います。和の食卓なら、山椒を軽く利かせた鴨胸肉のロースト、赤味噌とバルサミコのソースがおすすめです。さらに、ローズマリーとにんにくで焼くラムチョップのグリル、熟成感のあるコンテやマンチェゴなどのハードチーズも、余韻を豊かに引き出します。
シャトー・ロスランは、モロッコの公式原産地呼称であるAOCコトー・ド・ラトラス(Coteaux de l’Atlas)の中心地帯、メクネス市の南方に位置します。行政区分としてはフェズ=メクネス地方に属し、メクネスからアズルー方面へ続く内陸高原の景観に近いエリアです。大西洋岸や地中海沿岸より内陸性が強く、夏は乾燥して日差しが強い一方、標高約500〜700メートルの畑では夜間に気温が下がります。
この昼夜の寒暖差が酸を保ち、黒ブドウに香りの輪郭を与える重要な要素です。冬にはアトラス山脈の影響を受けて冷え込み、年間を通じて降雨は主に冬から春に集中します。石灰、粘土、砂礫が混じる土壌、乾いた風、豊富な日照という条件は、ボルドー系品種とシラーの完熟を促しながら、単なる濃厚さにとどまらない緊張感を育みます。フランスのCruやClimatとは異なる制度と景観を持つ土地ですが、区画ごとの個性を生かすシャトー・ロスランの取り組みは、メクネスのテロワールを明快に伝えています。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。