南ローヌを代表する名門M.シャプティエが手がける、シャトーヌフ・デュ・パプ2017。丸石と赤粘土が蓄える熱を映すグルナッシュ主体の赤で、熟した赤果実、甘草、南仏のハーブが重なる、力強さと気品を併せ持つ1本です。

M. Chapoutier(ミシェル・シャプティエ)は、1808年にローヌ北部のタン・レルミタージュで創業した歴史あるメゾンです。エルミタージュ、コート・ロティ、クローズ・エルミタージュといった北部ローヌの銘醸地を基盤としながら、現在はシャトーヌフ・デュ・パプを含む南部ローヌでも重要な存在感を示しています。とりわけ1990年に家業を継いだミシェル・シャプティエ氏は、畑の個性を明瞭に表すワイン造りを掲げ、早くからビオディナミ栽培を推進しました。
同メゾンの象徴的なエピソードとして、ラベルに点字を採用したことが挙げられます。これは視覚障がいのある友人との交流をきっかけに始められた取り組みで、品質への厳格な姿勢だけでなく、ワインをより開かれた文化として伝えようとする哲学も物語ります。単一畑キュヴェから地域名ワインまで、M. Chapoutierは土地の声を磨き上げる生産者として、国際的な評論家や愛好家から高い評価を得ています。
このM. Chapoutierのシャトーヌフ・デュ・パプ赤は、市場では「La Bernardine(ラ・ベルナルディンヌ)」の名で扱われることが多いキュヴェです。中心となる品種はグルナッシュで、ヴィンテージや流通仕様によって表記の差はあるものの、グルナッシュの熟した果実味と、アペラシオンらしい温かみを主軸に据えています。シラーやムールヴェードルを多くブレンドして骨格をつくるタイプとは異なり、グルナッシュの繊細なスパイス感と伸びやかな質感を表現するスタイルです。
ブドウは、シャトーヌフ・デュ・パプ村周辺に見られる丸い礫、ガレ・ルレ(galets roulés)と赤粘土を含む区画から得られます。日中に太陽熱を吸収した礫が夜間に熱を放つことで、ブドウはゆっくりと熟し、豊かな風味を蓄えます。醸造では過度な樽香で覆い隠すのではなく、コンクリートタンクを活用した発酵と熟成を基本に、果実、土壌、年の個性を素直に映す方針です。2017年は南ローヌで温暖かつ乾燥した年とされ、収量は控えめながら、凝縮した果実味と充実したタンニンを備えるヴィンテージとして知られます。市場価格は約14,000円がひとつの目安で、熟成した銘醸ローヌを楽しむ入り口としても注目される価格帯です。
グラスでは、縁にかすかなガーネットのニュアンスを帯び始めた、深みのあるルビーから赤紫の色調を見せます。粘性は中程度以上で、2017年の充実感を示しながらも、グルナッシュ主体らしい光を通す柔らかさを残します。第一香では、熟したラズベリー、レッドチェリー、プラム、乾燥イチジクを思わせる赤から黒の果実が前面に現れます。
空気に触れるにつれて、プロヴァンスのガリーグ――タイム、ローズマリー、ラベンダーを思わせる乾いたハーブ香――に、白胡椒、甘草、クローヴ、なめし革、温めた土のニュアンスが重なります。アタックは丸く豊かで、熟度の高い果実が口中を満たします。中盤ではきめ細かながら量感のあるタンニンと、南ローヌらしい穏やかな酸が輪郭を整え、単なる甘美さに終わらない芯を与えます。余韻にはブラックオリーブ、スパイス、乾いた石を思わせるミネラル感が長く続きます。すでに親しみやすい段階にありますが、適切に保管されたボトルはさらに数年、複雑さを深める可能性があると考えられます。
豊かな果実味、ハーブ、スパイスを備えるため、香ばしい焼き目や煮込みの旨味を持つ肉料理と好相性です。第一に、ローズマリーとニンニクを擦り込んだ仔羊背肉のローストがおすすめです。羊の脂の甘みをワインの熟した果実が受け止め、ハーブの香りが自然につながります。次に、牛すね肉を赤ワイン、トマト、黒オリーブでじっくり煮込むドーブ・プロヴァンサルは、余韻にある甘草やオリーブのニュアンスを引き立てます。
和の食卓なら、山椒を効かせた鴨ロースの炭火焼き、あるいは赤味噌と赤ワインで煮込む猪肉の煮込みも有力です。さらに、ナス、ズッキーニ、パプリカをオーブンで焼き、ラム肉のソーセージを添えたラタトゥイユ仕立てもよく合います。供出温度は16〜18度が目安です。若々しいボトルでは30分ほど前に抜栓、またはデキャンタージュを行うと、閉じていた香りが開きやすくなります。
AOCシャトーヌフ・デュ・パプは、アヴィニョンの北約20キロメートル、ローヌ川左岸に位置する南部ローヌの代表産地です。中心となるのはシャトーヌフ・デュ・パプ村で、北にオランジュ、西にローヌ川、南にソルグ川流域を望みます。アペラシオンはシャトーヌフ・デュ・パプのほか、ベダール・エ・ガルドンヌ、ソルグといった周辺コミューンにもまたがり、平坦地から緩やかな丘陵まで、多彩なテロワールを抱えます。
象徴的なのは、表土を覆うガレ・ルレです。ただし産地は一様ではなく、ラ・クローやレイネ、ボワ・ド・ラ・ヴィルヌーヴ周辺のような礫の多い場所、砂質土壌が優勢なクルテゾン寄りの区画、石灰岩や粘土が表情を見せる斜面が共存しています。地中海性気候による強い日照、夏の乾燥、そして湿気を払うミストラルが、健全で凝縮したブドウを育みます。M. Chapoutierの2017年は、この地の太陽の力を捉えながら、コンクリート熟成によって土地由来の風味を明快に描いたシャトーヌフ・デュ・パプです。
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