ペンフォールズのBin 150 Marananga Shiraz 2022は、バロッサ・ヴァレーの中でもより力強い表情を見せるマラナンガの個性を、精密さと厚みでまとめ上げた赤ワインです。黒系果実、スパイス、樽由来のニュアンスが重なり、価格帯以上の存在感を放ちます。

ペンフォールズは1844年創業のオーストラリアを代表する生産者で、アデレードを拠点に南オーストラリアの銘醸地を広く牽引してきました。とりわけ1930年代に誕生したGrangeは、同国を象徴するアイコンとして世界的評価を確立し、現在のペンフォールズの地位を不動のものにしています。広域の原酒を巧みに組み合わせながらも、最終的には明確なスタイルへ収斂させる設計思想は、単なる大手ではなく“基準”をつくる名門として語られる理由です。Binシリーズもその哲学を体現しており、土地の個性をより明快に切り取る実験場として機能してきました。
Bin 150 Marananga Shiraz 2022は、バロッサ・ヴァレーのサブリージョンであるマラナンガのシラーズを核に据えた一本です。マラナンガは石灰質や赤い粘土を含む畑が点在し、バロッサの中でもとりわけ凝縮感と構造の強さを与える土地として知られています。ペンフォールズはこのキュヴェで、単なる濃密さだけでなく、シラーズの黒い果実、モカ、リコリス、胡椒の輪郭を整理しながら、樽の質感を精緻に重ねています。発酵はステンレスタンクや大型発酵槽を用いた区画ごとの管理が基本とされ、熟成にはフレンチオークとアメリカンオークが組み合わされる傾向があります。新樽の甘やかさに寄りすぎず、果実と樽香の均衡を取るのがペンフォールズ流です。2022年はバロッサ全体で果実の充実と骨格の両立が見られた年とされ、価格帯はおよそ12,000円前後ながら、上位レンジに迫る密度を備えています。
グラスに注ぐと、色調は深いルビーから紫を帯びたガーネットで、縁まで黒紫の濃さが残ります。粘性は高く、脚の流れにも力が感じられます。第一香ではブラックベリー、カシス、ブルーベリーの黒系果実が前に出て、続いてシナモン、クローブ、黒胡椒、杉、カカオのニュアンスが開きます。時間とともにスミレ、乾いた土、ユーカリ、モカの香りが現れ、バロッサらしい温かみのある香調に奥行きが加わります。口中ではアタックにしっかりした果実の厚みがあり、中盤は熟したタンニンと豊かな酸が骨格を支えます。余韻は長く、黒果実、ローストスパイス、ダークチョコレートの印象がじわりと残り、力強さの中に整った輪郭が感じられます。
このワインには、旨味と香ばしさを備えた料理がよく合います。たとえば、仔羊のロースト・ローズマリー風味はシラーズの定番の相棒で、肉の甘みとハーブの香りを引き立てます。和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み・マッシュポテト添えなら、煮込みの深いコクとワインの黒系果実が美しく重なります。さらに、炭火焼きの牛サーロイン・黒胡椒ソース、あるいは鹿肉のロースト・ジュニパーベリー風味のようなジビエとも好相性です。食中酒としては、燻製ベーコンときのこのラグーパスタや、チェダーを使ったグラタンにも向きます。濃度が高いぶん、ソースや焼きの香りを持つ料理が合わせやすい一本です。
バロッサ・ヴァレーは南オーストラリア州アデレード北東部に広がる、オーストラリア屈指の赤ワイン産地です。なかでもマラナンガは、タヌンダの西側に位置し、マラナンガ・ロード周辺の畑を中心に、バロッサの中でもより肉厚でスパイシーなシラーズを生む地区として知られています。昼夜の寒暖差、乾燥した気候、古い樹齢のシラーズが残ること、そして砂質や粘土、石灰質が入り混じる土壌が、この土地の個性を形づくります。一般に「バロッサの力強さ」とひとまとめにされがちですが、マラナンガはその中でもより緻密で、黒果実の凝縮と土っぽさ、樽との相性の良さが際立つサブリージョンとされています。ペンフォールズ Bin 150 は、その土地の輪郭を現代的な精度で映し出す一本として、マラナンガの名を記憶に残します。