ピオ・チェーザレのバローロ2016は、アルバの老舗が複数の村に持つ自社畑のネッビオーロを束ねた、端正で長命な一本です。赤い果実、バラ、タール、スパイスを備え、2016年らしい緻密な酸と気品あるタンニンがクラシックな輪郭を形づくります。

Pio Cesare(ピオ・チェーザレ)は、チェーザレ・ピオが1881年にピエモンテ州アルバで創業した生産者です。バローロとバルバレスコの本拠地ランゲにおいて、19世紀から自社で瓶詰めを続けてきた先駆的な家の一つとして知られます。ワイナリーは今もアルバ旧市街にあり、代々の家族が経営を受け継いできました。近年はチェーザレ・ベンヴェヌートとフェデリカ・ボッファを中心に、歴史的なスタイルを守りながら畑の取得と品質向上を進めています。
哲学の核にあるのは、特定の畑の個性を尊重しつつ、バローロという産地全体の均衡をボトルに表すことです。単一畑の「Ornato」や「Mosconi」といったキュヴェも手がける一方、この通常バローロでは複数の優良区画を組み合わせます。力強さだけ、あるいは香り高さだけに偏らせず、熟成によって真価を増す古典的なネッビオーロを目指す姿勢が、評論家や愛好家から一貫して評価されています。
品種はネッビオーロ100%です。ピオ・チェーザレのバローロには、セッラルンガ・ダルバのOrnato、モンフォルテ・ダルバのMosconi、ノヴェッロのRavera、ラ・モッラ周辺など、家族所有畑のブドウが用いられます。年によってブレンド比率は調整されますが、一般にセッラルンガとモンフォルテは骨格、ノヴェッロのRaveraは張りのある酸と直線的なミネラル感、ラ・モッラは芳香としなやかさをもたらすとされます。
収穫後は除梗した果実を温度管理されたステンレスタンクで発酵させ、果皮との接触をおよそ25〜30日間確保します。ネッビオーロの色素、タンニン、香りを急がず引き出す工程です。その後、フレンチオークの大樽を中心に約30か月熟成し、瓶内でも休ませてから出荷します。新樽香を前面に置くのではなく、Terroirと熟成由来の複雑さを優先する醸造です。2016年はバローロで均整の取れた偉大な年と広く評され、成熟度、酸、タンニンが高い水準で揃ったヴィンテージです。
外観は、縁にオレンジがかったニュアンスを帯び始めた透明感のあるガーネット。濃密さよりも輝きが印象に残り、グラスの内側をゆっくり伝う粘性が、凝縮した果実味と熟成の進みを示します。第一香ではサワーチェリー、ラズベリー、赤スグリといった引き締まった赤い果実に、乾燥したバラ、スミレ、オレンジピールが重なります。
空気に触れると、タール、甘草、紅茶、ドライハーブ、森の下草、土を思わせる香りが現れ、ネッビオーロらしい陰影が深まります。アタックは瑞々しく、熟したチェリーの風味を鮮やかな酸が支えます。中盤では細かながら量感のあるタンニンが輪郭を形づくり、果実、鉄分を思わせるミネラル、樽由来の控えめなスパイスが緊密に結びつきます。余韻は長く、バラの花弁、甘草、塩味を帯びた土壌の印象が静かに続きます。すでに飲み頃に入っていますが、適切なセラーではさらに10年以上、熟成の表情を追えるでしょう。市場価格は約15,000円が目安で、2016年の評価と生産者の格を考えると、バローロの伝統派を知るための重要な選択肢です。
このワインには、タンニンを受け止めるたんぱく質と、香りを引き立てる土のニュアンスを備えた料理が合います。まず、仔牛のほほ肉をバローロまたは赤ワインで時間をかけて煮込むブラザート。ゼラチン質の豊かなソースが酸とタンニンをなめらかにつなぎます。次に、ポルチーニ茸とパルミジャーノ・レッジャーノを使ったリゾットは、茸の香りがワインのタールや下草の風味と共鳴します。
赤身の鴨胸肉をロゼ色にローストし、黒トリュフのソースを添える一皿も好相性です。鴨の脂が質感を整え、トリュフが熟成香を引き出します。和食なら、山椒を控えめに効かせた和牛の炭火焼き、あるいは赤味噌で煮込んだ猪肉も有力です。供出温度は16〜18℃を目安とし、若々しい骨格を和らげたい場合は、飲む1〜2時間前にデキャンタージュすると香りが開きやすくなります。
バローロDOCGはピエモンテ州クーネオ県、アルバの南西に連なるランゲ丘陵で造られます。主要11自治体のうち、ピオ・チェーザレにとって重要なセッラルンガ・ダルバ、モンフォルテ・ダルバ、ノヴェッロ、ラ・モッラは、それぞれ異なる表情を持ちます。セッラルンガ・ダルバのOrnatoは、石灰質を含むマール土壌から緊張感と堅牢なタンニンを生み、モンフォルテ・ダルバのMosconiは標高と冷涼さを備えた斜面で、濃さとスパイス感を示す傾向があります。
ノヴェッロのRaveraは、石灰と粘土を含む土壌、比較的涼しい条件により、酸の明瞭さと熟成力で名高いCruです。一方、ラ・モッラはトルトニアン期の青みがかったマールが多く、香水のような花の香り、丸み、早めにほどける質感をもたらすとされます。標高は概ね200〜500メートル、収穫期には朝霧と日中の陽光が交差する大陸性気候です。この複雑な地形と微気候のモザイクを、アルバの老舗が一つの均衡へとまとめたことこそ、Pio Cesare Barolo 2016の魅力です。
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