スコウラスのモスコフィレロ 2022は、ペロポネソス半島マンティニアの高地で育つ土着品種の個性を端正に表す白ワインです。白い花、柑橘、ハーブを思わせる芳香と、軽快ながら芯のある酸が魅力。冷菜から魚介、香草を使う料理まで幅広く寄り添います。

ドメーヌ・スコウラス(Skouras)は、醸造家ジョルジュ・スコウラスが1986年に創業した、現代ギリシャワインを代表する生産者の一つです。ブルゴーニュのディジョン大学で醸造学を修めたスコウラスは、帰国後、ネメアのアヨルイティコに国際品種カベルネ・ソーヴィニヨンを組み合わせた「メガス・オイノス」を発表し、ギリシャの土着品種が持つ潜在力を広く示しました。
拠点はペロポネソス半島北東部、アルゴリダ県マランドレニ村に置かれています。ネメアPDOを中心に赤ワインで高い評価を築く一方、各地の固有品種とTerroirを尊重し、マンティニアのモスコフィレロにも早くから取り組んできました。伝統を単に踏襲するのではなく、清潔な醸造と精確な温度管理によって、品種と産地の表情を明瞭に届けることが同社の哲学です。
2022年のスコウラス・モスコフィレロは、モスコフィレロ100%で造られる、マンティニアPDOの白ワインです。この品種は果皮に淡い灰桃色のニュアンスを持つことがあり、ギリシャでは香り高い白品種として特に知られています。ブドウは主にアルカディア県トリポリ近郊、テゲア高原を含むマンティニア台地の畑に由来します。標高およそ600〜700メートルに達する冷涼な環境が、品種の繊細なアロマと生き生きとした酸を保ちます。
収穫後は酸化を抑えながら丁寧に圧搾し、ステンレスタンクで低温発酵させる方針です。新樽の香りで輪郭を覆うのではなく、果実、花、ハーブの香気を純粋に表現するスタイルが核となります。一般に短期間の澱との接触を通じ、香りの軽やかさを損なわずに口当たりへ穏やかな厚みを加える造りとされています。2022年は、モスコフィレロらしい芳香性と引き締まった印象を期待したいヴィンテージです。
外観は淡いレモンイエローで、縁にはわずかに緑がかった輝きが見られます。粘性は軽快から中程度で、若々しく清澄な印象です。第一香ではライム、レモンの皮、青リンゴ、白桃を思わせる果実香が立ち、時間とともに白バラ、オレンジブロッサム、ジャスミンのようなフローラルな表情が開きます。さらに、ミントやレモンバームを連想させる涼やかなハーブ香、ほのかなスパイス感が重なります。
口に含むと、アタックは軽快でみずみずしく、柑橘を思わせる酸が輪郭をつくります。中盤では白い果実の柔らかな果実味と、澱由来とされる控えめな丸みがバランスを取り、薄衣のような苦味が味わいを引き締めます。余韻はドライで清らか。花とグレープフルーツの皮を思わせるニュアンスを残しながら、塩味を帯びた感覚へ静かにつながります。過度に冷やしすぎず、8〜10℃前後で供すると、香りと酸の両方を捉えやすくなります。
このワインの花の香りと直線的な酸は、レモン、ハーブ、オリーブオイルを生かした料理と好相性です。まず合わせたいのは、レモンとオレガノでマリネして炭火焼きにしたスズキ、または真鯛のグリルです。魚の香ばしさを受け止めながら、後味を爽やかに整えます。オリーブオイル、にんにく、唐辛子で仕上げる小エビとズッキーニのスパゲッティも、柑橘的な酸とハーブ香がよく響き合います。
前菜なら、タコをやわらかく茹で、赤玉ねぎ、ケッパー、セロリ、レモンで和えた地中海風サラダがおすすめです。ギリシャ料理では、ほうれん草とフェタチーズをパイ生地で包んで焼くスパナコピタ、あるいは鶏むね肉のレモンハーブローストにも向きます。香りの強いブルーチーズや甘味の濃いソースは避け、素材の塩味と酸味を生かす皿を選ぶと、モスコフィレロの透明感が際立ちます。
マンティニアPDOは、ペロポネソス半島中央部のアルカディア県に位置し、中心都市トリポリの南側からテゲア周辺へ広がる高原地帯です。古代ギリシャ以来「アルカディア」と呼ばれてきた山あいの盆地は、周囲を山々に囲まれ、標高の高さによる涼しい夜と長い生育期間に恵まれます。夏の日中には十分な日照を受けながら、夜間には気温が下がるため、ブドウは香りを蓄えつつ酸を失いにくい環境です。
畑は石灰質と粘土質を含む土壌に植えられることが多く、土壌と標高、風の影響がモスコフィレロの緊張感あるスタイルを形づくります。ネメアやアルゴスの温暖で力強い赤ワイン産地とは対照的に、マンティニアは繊細なアロマ、軽快な骨格、清潔なフィニッシュで知られます。スコウラス・モスコフィレロ 2022は、この高原のCruとしての個性を、現代的で親しみやすいかたちに映した一本です。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。