タスカ・ダルメリータの代表作「ロッソ・デル・コンテ」2018年は、シチリア内陸部の強い日差しと標高由来の冷涼感が織りなす、格のある赤ワインです。ネロ・ダーヴォラとペリコーネを軸に、熟した果実味と骨格、熟成由来の深みが調和します。

タスカ・ダルメリータは1830年創業の、シチリアを代表する名門ワイナリーです。拠点は州中央部のコンテッサ・エンテッリーナ周辺にあり、長く続く家族経営のなかで、単なる大規模生産者ではなく「シチリアの上質な土地を映す旗手」として評価を築いてきました。とりわけ近代以降は、島のワインを量から質へと押し上げる存在として語られることが多く、土着品種の再評価と畑ごとの個性の表現に力を注いできました。なかでもロッソ・デル・コンテは、同家の歴史と美意識を象徴する上級キュヴェとして知られています。
このワインの核を成すのは、シチリア土着品種のネロ・ダーヴォラとペリコーネです。主なブドウはコンテッサ・エンテッリーナのブテーラ・グリッフェオ周辺の区画から収穫されるとされ、標高のある内陸丘陵、昼夜の寒暖差、粘土石灰質を含む土壌が、濃さだけでなく張りのある酸を与えます。2018年は極端な派手さよりも、熟度と均整を両立した年として受け止められる傾向があります。
醸造は伝統と精密さのバランスが特徴です。発酵はステンレスタンクを主体に行い、色と香りを丁寧に引き出したうえで、オーク樽で熟成させることで骨格と複雑味を与えます。新樽の強さを前面に出すスタイルではなく、果実、スパイス、樽由来のトーンが自然に溶け合う設計で、上級キュヴェらしい落ち着きが生まれます。市場価格が約15,000円という点から見ても、島の代表格にふさわしい位置づけです。
外観は、深みのあるルビーレッドからガーネットへと移ろう落ち着いた色調で、グラスの縁には熟成の気配がにじみます。粘性は中庸からやや高めで、静かな濃度を感じさせます。第一香では、ブラックチェリー、熟したプラム、ドライフィグのような果実が中心に立ち、そこへリコリス、黒胡椒、地中海のハーブが重なります。しばらく開くと、杉、カカオ、タバコ、ほのかな鉄分を思わせるニュアンスが現れ、輪郭に奥行きが出てきます。
口に含むと、アタックはしなやかで、甘やかな果実味が先に広がります。その後、緻密なタンニンが中盤を支え、酸が全体を引き締めることで、重さ一辺倒には傾きません。余韻にはスパイス、乾いた土、黒系果実の皮のような渋みが長く残り、2018年らしい均整の良さとクラシックな余韻を印象づけます。一般的には、若さの勢いよりも、数年の熟成を経たあたりで真価が見えやすいタイプと考えられています。
ロッソ・デル・コンテ2018は、シチリアらしい濃密さと上品さを併せ持つため、旨味の強い肉料理と好相性です。たとえば、仔羊のロースト・ローズマリーとニンニクの香り、牛ほほ肉の赤ワイン煮込み・ポレンタ添え、鴨胸肉のロースト・バルサミコソースなどが挙げられます。さらに、イノシシのラグーを絡めたタリアテッレや、グリルした羊肉のスカロッピーネとも合わせやすいでしょう。
シチリアの文脈に寄せるなら、ナスのカポナータを添えたグリルポーク、ペコリーノ・ロマーノを効かせたアランチーニ、トマトとオリーブで煮込んだカジキの料理なども、ワインのスパイス感と調和します。果実味とタンニンが料理のコクを受け止めるため、ソースに少し甘みや酸味があると、よりきれいに寄り添います。
産地はイタリア・シチリア州の内陸、コンテッサ・エンテッリーナを中心とする丘陵地帯です。地中海の強い日差しを受けながらも、標高と風の影響で夜には温度が下がり、ブドウはしっかり熟しつつ酸を保ちやすい環境にあります。周辺は石灰質や粘土質を含む土壌が多く、保水性と排水性のバランスがワインの構造に影響を与えます。
タスカ・ダルメリータの自社畑「Tenuta Regaleali」は、シチリア島のワイン地図を語るうえで欠かせない存在で、コンテッサ・エンテッリーナという町名そのものが高品質の象徴として知られるようになりました。大陸的な重さではなく、地中海の光、乾いた風、土着品種の個性が重なり合うことで、ロッソ・デル・コンテは「豊かだが鈍らない」シチリア赤の典型として存在感を放っています。