ヴィナッティエリ・ティチネージのリゴルネット・メルロー2022は、スイス南部ティチーノ州の穏やかな日差しとアルプス由来の涼しさを映す赤ワインです。リゴルネット村のメルローらしい、果実味、端正な骨格、樽由来の奥行きを紐解きます。

Vinattieri Ticinesi(ヴィナッティエリ・ティチネージ)は、ルイジ・ザニーニによって1985年に設立された、スイス・ティチーノ州を代表する生産者です。スイスワインのなかでも生産量が限られ、国外で出会う機会が多くはないティチーノのメルローを、土地の個性を備えた本格的な赤として広く知らしめてきました。拠点を置くのは、州最南部メンドリジオット地区のリゴルネット村です。
同社の核にあるのは、メルローを単なる国際品種として扱うのではなく、ティチーノのTerroirを語る品種として磨き上げる考え方です。力強く長期熟成型の上級キュヴェ「Vinattieri」を頂点に据えながら、村名の個性に焦点を当てるワインも手がけています。リゴルネット・メルローは、その哲学をより親しみやすい輪郭で表す存在です。温暖な南の光と山岳地帯の張りを併せ持つ土地で、完熟感だけに寄りかからない均衡を追求しているとされます。
Ligornetto Merlot 2022は、リゴルネット周辺で栽培されたメルローによるティチーノDOCの赤ワインです。品種構成をメルローに絞ることで、黒系果実の豊かさ、なめらかなタンニン、土壌を思わせる落ち着いたニュアンスを明瞭に表現します。リゴルネットはメンドリジオの南西、イタリア国境にも近い場所にあり、平坦地から緩やかな起伏へと続く畑が点在します。石灰質や粘土質、沖積土などが混じる土壌は、区画ごとに果実の表情を変えます。
醸造では、収穫したブドウを発酵・醸しの工程で果皮と接触させ、色調、香り、タンニンを丁寧に引き出します。リゴルネットは、一般にバリックで約12カ月熟成させるスタイルで知られています。小樽の印象を前面に押し出すのではなく、果実の芯を保ちながら質感と複雑さを加える設計です。2022年はヨーロッパ各地で暑く乾燥した年として記憶されており、熟した果実味が期待される一方、この地では夜間の気温低下や山からの風が酸の輪郭を支える重要な要素になります。
外観は、縁にわずかな紫の気配を残す濃いルビーから深いガーネット寄りの赤。グラスの内側をゆっくり流れる脚からは、一定の粘性と果実の充実感が読み取れます。第一香では、カシス、ブラックチェリー、熟したプラムといった黒系果実が中心です。続いてスミレ、乾いたハーブ、黒胡椒が顔をのぞかせ、空気に触れるにつれてバニラ、杉、カカオ、ほのかな燻香が重なります。
口に含んだアタックは丸く、2022年らしい熟度を感じさせる果実味が広がります。中盤では、メルロー特有のしなやかなタンニンが輪郭をつくり、ブラックベリーやダークチョコレートの風味に、土っぽさを思わせる陰影が加わります。酸は過度に尖らず、南の産地らしい量感を軽快に整える役割です。余韻には樽由来の甘いスパイス、ビターなカカオ、石灰質土壌を連想させる引き締まった感触が残ります。評論家や愛好家の間でも、ティチーノのメルローはボルドー的な構成と北イタリアの明るさを併せ持つと評されることがあり、このワインもその魅力を理解しやすい一本です。
果実の密度と滑らかなタンニンを持つリゴルネット・メルローには、脂や旨味を備えた肉料理がよく合います。第一に、ローズマリーとニンニクで香りを付けた仔羊肩肉のローストがおすすめです。羊の風味をワインの黒系果実とハーブ香が受け止め、焼き目の香ばしさに樽のニュアンスが寄り添います。
牛ほほ肉を赤ワイン、フォン、香味野菜でじっくり煮込むブラザートも好相性です。煮込みのゼラチン質がタンニンをいっそうなめらかに感じさせ、ソースの深みが余韻のカカオやスパイスと響き合います。鴨胸肉のローストにポルチーニ茸のソテーを添える一皿も、土の気配を持つ香りを引き立てます。より身近な食卓なら、牛肉とリコッタを詰め、セージバターで仕上げるラヴィオリ、あるいは熟成したグリュイエールやスブリンツなどのハードチーズも適しています。供出温度は16〜18℃を目安にすると、果実と香りのバランスを捉えやすくなります。
リゴルネット村はティチーノ州メンドリジオ郡に属し、メンドリジオ、ステレジオ、ジェネストレリオといった集落に囲まれたメンドリジオットの一角です。行政上は現在、メンドリジオ市域に含まれます。州都ベッリンツォーナより南、モンテ・チェネリ峠以南のソットチェネリに位置し、ルガーノ湖やコモ湖方面から届く穏やかな影響と、アルプス南麓らしい冷涼な空気の流れが交差します。
ティチーノはスイスでメルローが最も重要な品種となった地域で、19世紀末のフィロキセラ禍後に植栽が広がりました。リゴルネットを含むメンドリジオットは、州内でも比較的温暖で日照に恵まれ、十分な成熟を得やすい地域です。それでも山地が近く、昼夜の寒暖差が保たれやすいことが、果実にだれない酸と香りの鮮度を与えるとされます。石灰質を含む土壌、南向きの光、そして南アルプスの気候。この重なりこそが、Ligornetto Merlotにふくよかさだけでは終わらない端正な背骨を授けています。
本レビューは公開されている専門家評価・市場情報を AI が集約した推定値であり、執筆者による実飲に基づくものではありません。